口腔機能低下症(オーラルフレイル)

口腔機能低下症・オーラルフレイル

いつまでも美味しく食べ、元気に過ごすために——口腔機能と全身の健康の深い関係をわかりやすく解説します。

なぜ今、口の機能が大切なのか

歯を持つ人は増えているのに、食べにくい人も増えている

8020運動の成果により歯を持つ高齢者が大幅に増えました。しかし一方で「かみにくい」と感じる人が高齢期で急増しています。歯の数(形態)と口腔の機能は別の問題です。

8020達成率(令和6年)*1
61.5%
前回令和4年(51.6%)から大幅に上昇
80歳の2人に1人超が達成
8020達成率の年次推移 7% 51.2% 51.6% 61.5% 1989年 2016年 2022年 2024年
一方で… *2

「かみにくい」有訴者数が
70歳以上で急増しています

かみにくいの有訴者率(年齢別・人口千人あたり参考値) 70歳以上で急増 10 18 30 62 100 40代 50代 60代 70代 80歳〜 120 60 0

人口千人あたりの有訴者数(参考値)

*1 厚生労働省:令和6年歯科疾患実態調査結果の概要,令和7年6月公表(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59190.html)
*2 厚生労働省:国民生活基礎調査 有訴者率・症状別(令和4年)参考値

咀嚼と口腔機能について

「食べる」を支える6つの機能

食べ物を噛み、飲み込むまでの動作は6つの要素が同時に連携して成り立っています。1つでも衰えると全体の機能に影響が及びます。

食べる機能を支える6要素のハブアンドスポーク図 咀嚼 食べる機能 歯・義歯噛み砕く 咀嚼筋顎を動かす 唾液まとめ潤す 舌・口唇送り込む 頬の筋肉支え保持 神経・感覚食感認知 6つの機能が同時に連携して「食べる」が実現されます
1

歯・義歯

上下の歯が食べ物に咬み合わさり、一口を噛み砕く力の源。義歯(入れ歯)も同様の役割を担います。

低下すると:固いものが食べられず食事の幅が急激に狭まる

2

咀嚼筋

顎を上下・左右に動かす筋肉群(側頭筋・咬筋等)。全身の筋肉と同様、加齢や使わないことで萎縮します。

低下すると:食事時間が長くなり顎が疲れやすくなる

3

唾液

食べ物を溶かして味を感じやすくし、まとめて「食塊(しょっかい)」に変えます。嚥下(飲み込み)を助ける潤滑油でもあります。

低下すると:食べ物がまとまらずむせや誤嚥のリスクが高まる

4

舌・口唇

舌は食べ物を奥歯へ運び、食塊をまとめてのどへ送り込む重要な器官。口唇は口を閉じて食べ物を保持します。

低下すると:食べこぼし・むせが増え滑舌にも影響が出る

5

頬の筋肉

頬袋を形成し、食べ物が歯列の外側にこぼれるのを防ぎ、奥歯の上に食べ物を保持します。

低下すると:食べ物が頬に詰まりやすく食事が非効率になる

6

神経・感覚

歯周組織の感覚神経が食べ物の固さ・食感を感知し、適切な力加減を脳に伝えます。精密なセンサーです。

低下すると:力加減が難しくなり歯や顎に過剰な負担がかかる

これら6つの要素が複合的に連携して「食べる機能」が成り立っています。加齢に伴いどれかが衰えると他の機能でカバーしようとしますが、やがて全体の機能が低下し食事に支障が出てきます。口の中の機能を守ることが、豊かな食生活の維持に直結しています。

3学会合同ステートメント(2024年)

オーラルフレイルとは

日本老年医学会・日本老年歯科医学会・日本サルコペニア・フレイル学会の3学会が2024年に定義を統一しました。

オーラルフレイルは「口の機能が健常な状態(健口)」と「口腔機能低下症」の間にある段階。早期に対応することで改善が可能です。

オーラルフレイル概念図(一般市民向け)

出典:オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント(2024年)日本老年歯科医学会

セルフチェック:OF-5チェックリスト

5項目のうち、2項目以上に該当するとオーラルフレイルです。

確認項目該当非該当
自身の歯は何本ありますか?
さし歯・金属かぶせは「自分の歯」。インプラントは除く。
0〜19本20本以上
半年前と比べて固いものが食べにくくなりましたか?はいいいえ
お茶や汁物等でむせることがありますか?はいいいえ
口の渇きが気になりますか?はいいいえ
普段の会話で、言葉をはっきり発音できないことがありますか?はいいいえ
2+

2項目以上に該当するとオーラルフレイルです。改善できる段階ですので、お早めにご相談ください。

研究からわかること ― 柏スタディ

見過ごすとどうなる?

東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢らによる大規模研究(柏スタディ)は、千葉県柏市の地域在住高齢者を2012年から追跡した前向きコホート研究です。年齢・性別・BMI・認知機能・うつ傾向・服薬数など多くの要因を統計学的に調整したうえで、健常群との比較を行いました。

2,011
名の参加者
45
か月の追跡
6
口腔指標で定義
千葉県柏市
2012年〜実施
柏スタディ:オーラルフレイルのリスク倍率 身体的フレイル2.41倍(2年後)、要介護認定2.35倍(45か月後)、サルコペニア2.13倍(2年後)、全死亡率2.09倍(45か月後) 1.0× 2.0× 身体的フレイル 2.41倍(2年後) 要介護認定 2.35倍(45か月後) サルコペニア 2.13倍(2年後) 全死亡率 2.09倍(45か月後) ← 健常群(1.0倍)基準。年齢・BMI・認知機能等を統計学的に調整済み。

※サルコペニア:加齢などによる筋肉量・筋力の低下。転倒・骨折・要介護リスクに関連します。

参考文献:Tanaka T, Takahashi K, Hirano H, et al.: Oral Frailty as a Risk Factor for Physical Frailty and Mortality in Community-Dwelling Elderly. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2018;73(12):1661-1667. doi:10.1093/gerona/glx225

オーラルフレイルが引き起こす、負の連鎖

口の衰えは身体的フレイルだけでなく、社会的・精神的フレイルとも深く連鎖しています。

特に「社会的フレイル」とのつながり

1

食べられるものが限られてくる

硬いものが避けられ、食の楽しみが少なくなる

2

会食・外食を避けるようになる

「食べこぼしが恥ずかしい」「うまく話せない」という不安から、人と食べる機会が減る

3

社会的孤立・活動性の低下

交流・外出機会が減り、精神・認知機能にも影響が波及する

!

社会的フレイル→全身のフレイルへ

身体・精神・社会が連鎖して衰え、要介護リスクが大幅に高まります

尾崎歯科でできること

当院でできる口腔機能の数値化

オーラルフレイルは自覚しにくいため、専用機器による客観的な検査が重要です。尾崎歯科では7項目の口腔機能を数値として見える化し、低下の早期発見と予防につなげます。

1

口腔衛生状態

お口の細菌量を測ります

2

口腔乾燥

唾液の出る量を測ります

3

咬合力

噛む強さを測ります

4

舌口唇運動機能

舌と唇の動きを測ります

5

舌圧

舌で押す力を測ります

6

咀嚼機能

食べ物をすりつぶす力を測ります

7

嚥下機能

飲み込む力を測ります

3+

3項目以上に該当すると「口腔機能低下症」と診断されます。診断後は歯科治療やリハビリで改善が可能です。

対象

55歳以上

年齢以外の条件なく、どなたでも対象です

目的

機能の「現状把握」と「低下の早期発見」
数値に基づいた個別の予防・改善指導

健康保険について

口腔機能低下症の検査・管理は健康保険が適用されます(2018年より)。窓口でのご負担は原則1〜3割です。詳しくはスタッフにお尋ねください。

ご注意

現在、人手の関係から全員の方への実施はできておりません。気になる方はお気軽にスタッフまでお声がけください。ご対応させていただきます。

いつまでも元気でいるために

「最近食べにくくなった」「むせることが増えた」——
小さなサインも、ぜひスタッフにお聞かせください。

011-231-8031

参考文献

1. 厚生労働省:令和6年歯科疾患実態調査結果の概要,令和7年6月公表(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59190.html)
2. 厚生労働省:国民生活基礎調査 有訴者率・症状別(令和4年)参考値
3. 日本老年医学会・日本老年歯科医学会・日本サルコペニア・フレイル学会:オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント,老年歯科医学 38(supplement):86-96,2024(https://doi.org/10.11259/jsg.38.supplement_86)
4. Tanaka T, Takahashi K, Hirano H, et al.: Oral Frailty as a Risk Factor for Physical Frailty and Mortality in Community-Dwelling Elderly. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2018;73(12):1661-1667. doi:10.1093/gerona/glx225
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