口腔機能低下症・オーラルフレイル
いつまでも美味しく食べ、元気に過ごすために——口腔機能と全身の健康の深い関係をわかりやすく解説します。
なぜ今、口の機能が大切なのか
歯を持つ人は増えているのに、食べにくい人も増えている
8020運動の成果により歯を持つ高齢者が大幅に増えました。しかし一方で「かみにくい」と感じる人が高齢期で急増しています。歯の数(形態)と口腔の機能は別の問題です。
80歳の2人に1人超が達成
「かみにくい」有訴者数が
70歳以上で急増しています
人口千人あたりの有訴者数(参考値)
咀嚼と口腔機能について
「食べる」を支える6つの機能
食べ物を噛み、飲み込むまでの動作は6つの要素が同時に連携して成り立っています。1つでも衰えると全体の機能に影響が及びます。
歯・義歯
上下の歯が食べ物に咬み合わさり、一口を噛み砕く力の源。義歯(入れ歯)も同様の役割を担います。
低下すると:固いものが食べられず食事の幅が急激に狭まる
咀嚼筋
顎を上下・左右に動かす筋肉群(側頭筋・咬筋等)。全身の筋肉と同様、加齢や使わないことで萎縮します。
低下すると:食事時間が長くなり顎が疲れやすくなる
唾液
食べ物を溶かして味を感じやすくし、まとめて「食塊(しょっかい)」に変えます。嚥下(飲み込み)を助ける潤滑油でもあります。
低下すると:食べ物がまとまらずむせや誤嚥のリスクが高まる
舌・口唇
舌は食べ物を奥歯へ運び、食塊をまとめてのどへ送り込む重要な器官。口唇は口を閉じて食べ物を保持します。
低下すると:食べこぼし・むせが増え滑舌にも影響が出る
頬の筋肉
頬袋を形成し、食べ物が歯列の外側にこぼれるのを防ぎ、奥歯の上に食べ物を保持します。
低下すると:食べ物が頬に詰まりやすく食事が非効率になる
神経・感覚
歯周組織の感覚神経が食べ物の固さ・食感を感知し、適切な力加減を脳に伝えます。精密なセンサーです。
低下すると:力加減が難しくなり歯や顎に過剰な負担がかかる
これら6つの要素が複合的に連携して「食べる機能」が成り立っています。加齢に伴いどれかが衰えると他の機能でカバーしようとしますが、やがて全体の機能が低下し食事に支障が出てきます。口の中の機能を守ることが、豊かな食生活の維持に直結しています。
3学会合同ステートメント(2024年)
オーラルフレイルとは
日本老年医学会・日本老年歯科医学会・日本サルコペニア・フレイル学会の3学会が2024年に定義を統一しました。
オーラルフレイルは「口の機能が健常な状態(健口)」と「口腔機能低下症」の間にある段階。早期に対応することで改善が可能です。
出典:オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント(2024年)日本老年歯科医学会
セルフチェック:OF-5チェックリスト
5項目のうち、2項目以上に該当するとオーラルフレイルです。
2項目以上に該当するとオーラルフレイルです。改善できる段階ですので、お早めにご相談ください。
研究からわかること ― 柏スタディ
見過ごすとどうなる?
東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢らによる大規模研究(柏スタディ)は、千葉県柏市の地域在住高齢者を2012年から追跡した前向きコホート研究です。年齢・性別・BMI・認知機能・うつ傾向・服薬数など多くの要因を統計学的に調整したうえで、健常群との比較を行いました。
※サルコペニア:加齢などによる筋肉量・筋力の低下。転倒・骨折・要介護リスクに関連します。
オーラルフレイルが引き起こす、負の連鎖
口の衰えは身体的フレイルだけでなく、社会的・精神的フレイルとも深く連鎖しています。
特に「社会的フレイル」とのつながり
食べられるものが限られてくる
硬いものが避けられ、食の楽しみが少なくなる
会食・外食を避けるようになる
「食べこぼしが恥ずかしい」「うまく話せない」という不安から、人と食べる機会が減る
社会的孤立・活動性の低下
交流・外出機会が減り、精神・認知機能にも影響が波及する
社会的フレイル→全身のフレイルへ
身体・精神・社会が連鎖して衰え、要介護リスクが大幅に高まります
尾崎歯科でできること
当院でできる口腔機能の数値化
オーラルフレイルは自覚しにくいため、専用機器による客観的な検査が重要です。尾崎歯科では7項目の口腔機能を数値として見える化し、低下の早期発見と予防につなげます。
口腔衛生状態
お口の細菌量を測ります
口腔乾燥
唾液の出る量を測ります
咬合力
噛む強さを測ります
舌口唇運動機能
舌と唇の動きを測ります
舌圧
舌で押す力を測ります
咀嚼機能
食べ物をすりつぶす力を測ります
嚥下機能
飲み込む力を測ります
3項目以上に該当すると「口腔機能低下症」と診断されます。診断後は歯科治療やリハビリで改善が可能です。
対象
55歳以上
年齢以外の条件なく、どなたでも対象です
目的
機能の「現状把握」と「低下の早期発見」
数値に基づいた個別の予防・改善指導
健康保険について
口腔機能低下症の検査・管理は健康保険が適用されます(2018年より)。窓口でのご負担は原則1〜3割です。詳しくはスタッフにお尋ねください。
ご注意
現在、人手の関係から全員の方への実施はできておりません。気になる方はお気軽にスタッフまでお声がけください。ご対応させていただきます。
参考文献
